対談CONVERSATION

対談

これまでさまざまな著名人をお招きしてきたディーエムシーの対談のコーナー。今回は、スペシャル対談として‟雀鬼“こと桜井章一氏をゲストにお迎えしました。引退するまでの20年間無敗を貫くという偉業を成し遂げ、麻雀の世界では知らない者はいないカリスマ的存在の桜井章一氏。その思想は、ビジネスの世界にも通じる部分が多く、今年出版されたサイバーエージェントの藤田晋社長との共著『運を支配する』(幻冬舎刊)は、ヒットを記録。多くのビジネスパーソンからも絶大な支持を集めています。私もそうした桜井章一ファンの一人。念願がかなって、桜井章一さんが主宰する雀鬼流漢道麻雀道場 牌の音へ――。

「努力は報われる」という思い込みが、運を遠ざける

桜井章一 丸山学生時代から桜井さんの大ファンです。
桜井さんがモデルとなった『雀鬼3』のビデオの制作のときには、エキストラに応募したくらいです。運よく通行人役で出演させてもらえました。

桜井さん(以下、敬称略)じゃあオーディションに来てたんだ。俺とも会っていた?

丸山はい、お会いさせて頂きましたがセリフの無い役だったので直接お話しする事はなかったです。ただ、桜井さんが役者の方に牌指導をされているところを横から緊張しながら拝見していました。その後も、仕事の悩みで心が折れそうになったり、起業を決意したときも、桜井さんの本に幾度となく励まされてきました。「世の中に麻雀を好きな人は五万といるけれど、麻雀に愛されたのは、桜井さんだけだ」と世間で言われています。「愛される」ということとも関係しますが、「努力をしたら上手くなって当然だ、という気持ちは一度捨てなければいけない」と著書で書かれていましたね。

桜井「努力した結果、成功しました」とか、「いま努力していると必ず夢や希望が実現する」という人は大勢います。みなさん努力という言葉をとても特別視しているようだけれど、そうやって大切にされている言葉ほど、俺は恐いんだよ。努力とか愛とか……。言葉としてはあるけれど、俺はそういうものは、本当は存在しないと思っている。

丸山私も気を抜くと、耳触りのいい言葉を使ってしまいがちです。

桜井「上手くなる」「愛される」「成功する」なんていうものは、どれも努力の賜物なんかじゃないんだよ。よく、努力をすれば勝てるようになると思っている人から、どんな努力をすれば勝てるのかと聞かれるけれど、努力したらその見返りで勝てるようになれるというのは間違い。調子の良いときに頑張るのは努力ではないし、そういうときに与えられる評価だって、そんなものは信用できない。

不調こそ我実力。好調な時こそ、驕ることなく「土に還る」

丸山昭好 丸山困ったときに周りの方に相談できないというのは、経営者にも多い悩みだと思います。私自身も仕事をしていると常に悩みはあります。うまくいかないときは、「不調こそ我実力なり」という桜井さんの言葉を思い出し、励みにしています。

桜井みなさん調子のいいときが実力だと思ってしまうだろうけど、調子が悪いときにこそ、それが自分の実力だと思っていれば、くよくよしない。たまたま知っている好調のときより、「自分にとって不都合なとき」の方を自分の基準に置いておけば、どんなに小さなことでも幸運なことが起きるとすぐにわかるようになる。

丸山たしかに人間、好調なときが実力だとつい思ってしまいがちですよね。

桜井好調な時を自分の実力だと思っていると、不調のときに「今日はどこが悪いからだ」とか、「あの人がこれをしたから駄目だった」とか、なんでも自分以外の「せい」にしてしまう。起きている悪いことは、すべて自分の責任。自分のことだけじゃなく、道場生や家族になにかが起きても俺のせいです。縁を持った以上、触れ合った時間が長ければ長いほど、俺の責任も重くなっていく。それが自責というものだと思っている。

丸山そういう自責の考え方も、麻雀を通して培われたのでしょうか?

桜井麻雀で起きることは、すべて自分の責任。俺が強かったんじゃなくて、負ける人は、自分から負けていくだけなんだよ。

丸山不調の時とは逆の好調な時にも、桜井さんはご自身を律しているというイメージがあります。家を建てた時に納戸で寝起きしていたという話を聞いたことがあります。快適とは言えない環境に身を置くことによって、調子のいい悪いを言い訳にしないように、自分を律するということだったのでしょうか。

桜井家を建てたときに、真っ先にいい部屋を選んで自分が驕る姿が嫌だったんだよね。だから、一年間は絶対に、家の中で一番狭くて冷暖房がない納戸で寝ようと決めたんです。
子供にも「なんでお父さんは納戸で寝るの?」と言われたけどね。やっぱり一年間くらいはそうでもしないと、驕るという気持ちが出てくるような気がしてならなかった。そういう環境で生活している人の気持ちになって生きなきゃいけない、と。それをずっと続けるということではなくて、初動の気持ちをどう置くかということです。

丸山初動ですか。そう言われてみると、忘れている時もありますね。常に自分自身を律するように意識をしていても、それでも時々、「胡坐をかいているな」と感じることもあるので。

桜井別に、胡坐がいけないということではないですよ。たまには胡坐かいたっていいじゃない。だけどやっぱり、律する気持ちを持っておかないとね。凧が天高く舞い上がっても、最後は地に還るという言葉があるんだけどね。どんなに上へあがったとしても自分は地に戻るという――それを俺は「土に還る」という言葉で表現しているんです。あくまでも自然な感覚で、自分の中でそういう感覚を入れ込んでいるんです。

いい見切りをするには、思考よりも感覚を研ぎ澄ますことが重要

素直 丸山『運を支配する』の中で、「いい見切りと、悪い見切りがある」という風に仰っていました。ビジネスにおいても「いい見切りと、悪い見切り」がありますが、世間一般では見切る=諦めるというネガティブなことに捉えられているように思います。

桜井この間も将棋の羽生さんとそのことについて話したところです。羽生さんが名人戦で勝負を諦めたという話になったんです。でも俺は「諦める形だって百種類、二百種類もある。羽生さんは諦めるという選択の中でも最高のものを自然に選び取っているんだよ。それは諦めないより数段いい選択だよ。実は諦めないで駄目になる場合がいっぱいある。諦めないでいいこともあれば、諦めちゃったほうがいい場合もある」という話をした。諦めが肝心、じゃないけどね。スポーツの試合では、最後まで諦めないことが常識とされているけれど、日頃からあんなことを言っているからいけないんだよ。

丸山諦めるという選択の中にも、色んな諦めの形があると。

桜井そう。それを、感覚的、瞬間的に感じて「諦めちゃえ」とか「これはちょっと諦めちゃマズいぞ」とか判断すればいい。とにかく、何かを掴むという感覚がもう既に駄目なんだよ。掴むのではなくて、触れるくらいかな。

丸山そういう感覚を身につけるには、常に訓練が必要なのでしょうか。

桜井訓練したり、努力したりすれば身につくというものでもないんだよ。成長しようと先へ進むのではなくて、逆に自分をどんどん下等化させていく。下等な生き方をしてみると、上等な人間のボロが見えてくるんですよ。
せっかく自分が努力して得たものを捨てるのは損だと思ってしまうじゃないですか。たとえば一生懸命勉強したのならその学問を、社会に出てからも利用したいと思うでしょう。俺なんかは学校で得たものは全部捨ててしまった。その代り、新しいものを自分で見つけていきました。学校で教わることは全部ある程度確定されたものです。だけど実際には、生きていくうえでは、確定されているものはほとんどないんです。感覚も同じこと。人に教わるとか、訓練で身につくものではなく、自分が感じたままを大切にしていくものなんです。

考えるよりも感じることで、運を味方につけられる

桜井章一 丸山昭好 丸山桜井さんの本を読ませて頂くと、「自然に還る」その言葉がすごく響きます。僕はもともと出身が信州の田舎の村なんです。人口6000人程度の小さな村で、それこそ緑と田んぼしかないようなところでした。自然から離れて都会で暮らしていると、危険を察知するセンサーが鈍っていくのではないかと思うのですが、感覚を鋭敏に保つために桜井さんが心がけていらっしゃることはありますか?

桜井自分の置かれている状況や状態をきちんと把握すればいい。この状態ならこうすればいい、こう動けばいいということを瞬間的に判断する。考えることを極力減らせば、残るのは「感じる」ことしかなくなっていく。面白いなとか楽しいなとか。俺はこうしたいんだと感じたら貫いた方がいい。人の言うことを聞いてそれに振り回されているようじゃ、しょうがないでしょう。社会で生きるには、自分の感覚よりも周りに合わせなければならない部分もある。けれどやっぱり自分を楽しませてやった方がいい。辛いことだろうが、厳しいことだろうが、頭で考えすぎるよりそれを楽しめた方がいいじゃないですか。

丸山頭で考えすぎているからこそ、悩みも自分で作り出しているんですね。

桜井人間は考える。それを捨てることはできない。だけど考えれば悩みになるでしょう。すると迷いや、弱気とか、いろいろな雑念が出て来る。そういうのが、勝負で言うところの「負け」なんです。弱いものが出てきたら、弱くなるに決まっているじゃないですか。逆に、自然に自分の中から強いものが出てきたら、結果強かったと言われるだけ。

丸山あまり力みすぎると良くないということは、ご著書の中にもありました。

桜井むしろここ一番というときは、自然と人間の持つ根本的な欲望、そういうのがなくなるんだよね。そういうときは、女性と、食べ物と、寝るということ。この三つを自然と避けたくなる。そうすると、欲がない形でいられる。一方で、勝負の相手は欲望を持ったままだから、そういう人は自分の欲望で潰れていく。

丸山自然と体がそうなっていくというのがすごいですよね。桜井さんの教えを伺っていると、麻雀は、本当に経営と似ているところが多いように思います。今日こうしてお話し聞かせて頂いて、自然体でいかないといけないなと実感しています。すべてを真似は出来ませんが、自分の感覚を意識したいと感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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桜井章一 プロフィール
1943年東京都生まれ。大学時代に麻雀を始め、裏プロとしてデビュー。以来引退するまで20年間無敗、「雀鬼」の異名を取る。引退後は「雀鬼流漢道麻雀道場 牌の音」を開き、麻雀を通して人としての道を後進に指導する「雀鬼会」を始める。『ツキの正体』(幻冬舎)、『人を見抜く技術』『負けない技術』(ともに講談社)など著書多数。
丸山昭好 プロフィール
株式会社ディーエムシー代表取締役1972年長野県生まれ。都内大手投資不動産会社にて15年間営業を経て、2011年6月ディーエムシーを創業。豊富な経験と理論で購入者目線に立ち厳選した不動産物件を販売。緻密な出口戦略と管理物件のアフターフォローに力を注いでいる。趣味はロードバイク、ロッククライミング。
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